はじめに:AIの「限界」を知ることは、あなたの「価値」を知ること
先週までは、AIを使って作業を効率化するアイデアをたくさん見てきました。非常に便利なAIですが、万能ではありません。実は、AIにはどうしても踏み込めない「苦手な領域」がはっきりと存在します。
AIの苦手なことを知ることは、決してAIを否定することではありません。むしろ、AIに任せる部分と、クリエイターであるあなたが「心を込めるべき部分」を分けるための、とても大切なステップです。
今週は、AIがどうしても読み解けない「気持ち」や「文脈(状況)」の正体と、それに向き合う私たちの役割について考えてみましょう。
1. AIは「行間」や「言葉の裏側」を読み取れない
クライアントとの打ち合わせで、こんな経験はありませんか?
「もっとシュッとした感じで」「信頼感があるけれど、親しみやすく」
こうした抽象的な言葉の裏には、クライアントの過去の経験や、その業界特有の事情、あるいは競合他社への対抗心など、さまざまな「背景(文脈)」が隠れています。
AIは、入力された「言葉」そのものは処理できますが、その言葉が発せられた「状況」や「話し手の表情」までを察して、真意を汲み取ることはできません。
- AIの動き: 「シュッとした」という言葉から、一般的によく使われる「シャープでモダンなデザイン要素」を平均的に導き出す。
- クリエイターの役割: 会話の流れや声のトーンから、「このクライアントが求めている『シュッとした』は、ミニマルなかっこよさではなく、情報の整理整頓のことだ」と行間を読み、軌道修正する。
2. AIは「文化的なニュアンス」や「感性」の微調整が苦手
デザインや言葉の選び方には、その国や地域、あるいは特定のコミュニティだけが持つ「特有の感覚(ニュアンス)」があります。
たとえば、日本独自の「間(ま)」の取り方や、季節感を感じさせる色の微妙な組み合わせ。あるいは、ターゲット層にしか伝わらない最新の流行語のニュアンスなどです。
- AIの動き: 世界中の膨大なデータから「確率的に正しいもの」を生成する。そのため、時として「どこかで見たような、平均的で無難なもの」になりがち。
- クリエイターの役割: ターゲットとなるユーザーの生活習慣や文化的な背景を想像し、「今のこの人たちには、この表現が一番心地よく響くはずだ」と、感性に基づいた微調整を行う。
3. AIは「結果に対する責任」を持てない
これが最も重要な点かもしれません。AIは指示された通りにアウトプットを出しますが、その結果、Webサイトが社会的にどう評価されるか、あるいは炎上のリスクがないかといった**「責任」**を負うことはありません。
- AIの動き: 倫理的にグレーな表現や、著作権に触れる可能性のある要素を、悪気なく(仕組み上)含んでしまうことがある。
- クリエイターの役割: 出来上がったものが「誰かを傷つけないか」「ブランドの信頼を損なわないか」を、社会的な倫理観を持って最終判断する。 —
4. 人間だからできる「読み解き」のチェックリスト
AIと協力しながら仕事を進める際、私たちが意識して担当すべき「人間ならではの仕事」をリストにしました。
| 私たちが大切にすべきこと | 具体的なアクション |
| 真のニーズの抽出 | クライアントが「本当に困っていること」は何か、対話を通じて引き出す。 |
| 感情への配慮 | ユーザーがこのサイトを訪れたとき、どんな気持ち(安心、ワクワク、期待)になってほしいかを設計する。 |
| 独自性のプラス | AIが出した「平均的な案」に、クリエイターとしての独自のこだわりや「遊び心」を加える。 |
| 社会的・倫理的判断 | その表現が今の時代に合っているか、誰に対しても誠実であるかをチェックする。 |
まとめ:AIは「計算」し、人間は「共感」する
AIはデータの海から答えを「計算」して出します。一方で、私たちは相手の立場に立って「共感」し、その場にふさわしい答えを「納得感」を持って導き出します。
AIという強力な相棒に作業を任せつつ、あなたは「クライアントやユーザーの一番の理解者」で居続けること。これこそが、AI時代にクリエイターが輝き続けるためのヒントです。
次のステップ:デザインプロセスをアップデートする
今週は、人間だからこそできる「読み解き」の重要性についてお話ししました。AIが苦手な部分を私たちが担うことで、仕事の質はぐっと高まります。
来週からは、具体的にデザイナーやコーダーの「日々の仕事の流れ」がどう変わっていくのかを詳しく見ていきます。まずはデザイナー編です。
来週のテーマ: