はじめに:AIは、あなたの「思考を広げるホワイトボード」
デザイナーにとって、プロジェクトの始まりは最もワクワクする瞬間であり、同時に「何から手をつければいいか」と悩む、最もエネルギーを使う時間でもあります。
第4週では、AIが苦手な「気持ちの読み解き」についてお話ししました。その「読み解いた意図」を形にしていく初期段階こそ、AIの得意分野である「情報の提案力」が大きな力を発揮します。
AIを単なる「絵を作る道具」ではなく、自分のアイデアを引き出してくれる「ホワイトボードのようなパートナー」として使ってみましょう。今回は、デザインの初動をスムーズにする3つのステップをご紹介します。
1. 言葉をビジュアルに変えて「ムード」を掴む
クライアントと共有したキーワード(例:「誠実」「モダン」「温かみ」)を、まずはAIを使って具体的なビジュアルに変換してみましょう。
これまではストックフォトサイトを何時間も検索してムードボードを作っていましたが、AIならあなたの頭の中にあるイメージを直接呼び出すことができます。
- 実践のヒント: 画像生成AI(MidjourneyやAdobe Fireflyなど)に、キーワードを組み合わせて指示を出します。
- 例: 「誠実さと透明感を感じさせる、IT企業のコーポレートサイトの配色と写真のトーン」
- メリット: 自分でも気づかなかった色の組み合わせや、質感の表現が提案されることで、デザインの方向性がスピーディに固まります。
2. 「デザインの引き出し」を瞬時に広げる
一つの正解を探すのではなく、まずは「可能性」を広げることが大切です。AIは、人間が思いつくバリエーションの限界を簡単に超えてくれます。
- 実践のヒント: ラフデザインの構成案を複数出してもらうよう、AI(ChatGPTの画像生成機能やFigmaのAI機能など)に依頼します。
- 例: 「ミニマルな構成」「グリッドを崩した動的な構成」「タイポグラフィを主役にした構成」など、異なるパターンのレイアウト案をリクエストする。
- メリット: 「このパターンは意外といいかも」「これは今回のコンセプトには合わないな」といった比較検討がすぐにできるため、迷う時間が減り、確信を持って制作に進めます。
3. デザインの「理由」を整理して言語化する
良いデザインには、必ず「なぜそうしたのか」という理由が必要です。AIは、あなたの直感的なデザイン案を整理し、言葉にするサポートもしてくれます。
- 実践のヒント: 作成したラフ案の意図をAIに伝え、クライアントへの説明文を作成してもらいます。
- 例: 「この青色には『信頼感』を、余白の広さには『誠実さ』を込めています。これを専門的なデザイン用語を交えつつ、わかりやすく説明して」
- メリット: 客観的な視点でデザインを言語化することで、自分自身の理解が深まり、クライアントへの説得力も増します。
4. デザイナーの役割は「選ぶこと」と「磨くこと」
AIと一緒にアイデアを出すようになると、デザイナーの仕事は「ゼロから描くこと」から、AIが出した多くの案の中から「最適なものを選び、磨き上げること」へと変化していきます。
多くの案の中から、第4週で触れた「クライアントの真のニーズ」に合致するものを選び取ること。そして、そこにクリエイターとしての独自の感性や細部へのこだわりを加えていくこと。
この「選択とブラッシュアップ」こそが、AI時代のデザイナーが最も力を注ぐべきクリエイティブな仕事です。
まとめ:最初の一歩をAIと軽やかに
「良いアイデアが出ない……」と一人で悩む時間は、もう必要ありません。AIというパートナーに、まずは「叩き台」を作ってもらいましょう。
その叩き台を否定したり、褒めたり、微調整したりする過程で、あなたにしか生み出せない「本物のデザイン」が見えてくるはずです。
次のステップ:コーダーの仕事はどう変わる?
今週はデザイナーの方向けのAI活用法をお伝えしました。来週は、同じように制作の現場を支えるコーダー(エンジニア)の方々が、AIとどのように付き合っていくべきかを探ります。